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メールマガジン
[Vol.099 2025年9月号]
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約半年前に “分析用キラルカラムを45度に折り曲げたらピーク形状にどんな影響を及ぼすか?” という、いかにも“良い子はマネしないで”シリーズらしい まともな神経の技術者・研究者ならば絶対やらないようなチャレンジをしたところ(Vol.090 2024年12月号 | 株式会社ダイセル ライフサイエンス製品営業部)これがなかなか好評💛でしたので、図に乗って、元に戻したらどうなっているのか? + もっと曲げたらどうなるのか? と、さらに突っ込んでみました。今回も前回と同じく、チューブベンター(8mm用) (写真①) なるツールを使用しました。
前回の折り曲げ前のカラム(写真②)と前回の折り曲げカラム(写真③)評価結果および半年以上放置された折り曲げカラムの再評価結果を並べてみました。なお、この可哀そうなカラムは “CHIRALPAK® IB N-5” です。
クロマトグラムとその下にクロマトパラメーター[保持時間(t)、保持係数(k’)、分離係数(α)、分離度(R)、理論段数(N)、ピーク対称性(Ps)、カラム圧力を示しています(写真④以降は、クロマトグラム横にパラメータを記載)。
【HPLC評価条件】
| カラム | CHIRALPAK® IB N-5 (0.46cmI.D. x 25cmL) |
|---|---|
| 移動相 | n-Hex/IPA = 90/10 <v/v> |
| 流速 | 1.0 mL/min. |
| 検出 | UV 254 nm |
| 温度 | 25℃ |
| 評価サンプル | trans-Stilbene oxide (TSO) |
| 打込み | 1.0 mg/mL(移動相) x 5 mL |
| コンディショニング | 25分 |
<前回の初期評価結果>
折れ曲がり前
| t1 | 5.65 | t2 | 7.70 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.48 |
| α | 1.81 | R | 10.13 |
| N1 | 17,367 | N2 | 17,205 |
| Ps1 | 1.20 | Ps2 | 1.40 |
| Press | 3.1 | ||
<前回折り曲げ後の評価結果>
45度折れ曲がり
| t1 | 5.65 | t2 | 7.79 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.50 |
| α | 1.84 | R | 8.17 |
| N1 | 10,876 | N2 | 10,135 |
| Ps1 | 1.33 | Ps2 | 1.48 |
| Press | 3.1 | ||
<今回試験前の評価結果>
45度折れ曲がったまま半年以上経過
| t1 | 5.60 | t2 | 7.69 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.50 |
| α | 1.83 | R | 8.02 |
| N1 | 10,667 | N2 | 10,116 |
| Ps1 | 1.33 | Ps2 | 1.46 |
| Press | 3.1 | ||
ほとんど変わっていないことを確認後、元の姿(幾分の歪み、というかくねりは残っていますが…)に戻して評価しました。前回報告では、管内の充填層の破壊が起きたために初期段数から61%まで段数低下したのでしょう、と推測したので、元に戻しても、段数は低下したまま、元には戻らないだろう、と考えていたのですが、予想外の結果でした。
| t1 | 5.59 | t2 | 7.54 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.46 |
| α | 1.77 | R | 9.28 |
| N1 | 15,825 | N2 | 15,545 |
| Ps1 | 1.21 | Ps2 | 1.36 |
| Press | 3.1 | ||
初期の理論段数(N1=17,367)から、45度の折り曲げで6割まで低下(N1=10,876)しましたが、元に戻したところ、どう見ても、くねりのあるカラムにもかかわらず、なんと、折り曲げ前の9割(N1=15,825)にまで復活しました。かなり驚きました。一旦、破壊された充填層は不可逆、と考えていたので、カラム管を元に戻しても、段数は低下したままになるだろう、と思っていましたが、初期の9割近くにまで復活しました、ということは…… 充填層は思ったよりも流動的で、ある程度可逆的なのでしょうか? それとも充填層は破壊されておらず、単に折り曲げたことが段数低下につながったのでしょうか??
次に前回と同様に5度、15度、30度、45度と折り曲げて、評価を行った結果 (縦軸:第一ピーク理論段数 N1 vs 横軸:折り曲げ角度) をグラフで示しました。9割程度復活した理論段数から、折り曲げ角度毎に“ほぼ同じ傾向で”段数低下が起きることがわかりました。
| t1 | 5.59 | t2 | 7.52 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.45 |
| α | 1.76 | R | 7.29 |
| N1 | 10,124 | N2 | 9,541 |
| Ps1 | 1.43 | Ps2 | 1.57 |
| Press | 3.1 | ||
さてここから、一気に90度まで折り曲げてみました。一体、IB Nカラムの運命はいかに…
| t1 | 5.57 | t2 | 7.42 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.42 |
| α | 1.74 | R | 6.72 |
| N1 | 9,250 | N2 | 8,561 |
| Ps1 | 1.50 | Ps2 | 1.65 |
| Press | 3.1 | ||
| t1 | 5.57 | t2 | 7.42 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.42 |
| α | 1.74 | R | 6.40 |
| N1 | 8,418 | N2 | 7,822 |
| Ps1 | 1.58 | Ps2 | 1.73 |
| Press | 3.1 | ||
| t1 | 5.57 | t2 | 7.41 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.42 |
| α | 1.73 | R | 6.17 |
| N1 | 7,866 | N2 | 7,277 |
| Ps1 | 1.65 | Ps2 | 1.82 |
| Press | 3.2 | ||
| t1 | 5.55 | t2 | 7.38 |
|---|---|---|---|
| k’1 | 0.82 | k’2 | 1.42 |
| α | 1.73 | R | 5.80 |
| N1 | 7,012 | N2 | 6,484 |
| Ps1 | 1.85 | Ps2 | 2.04 |
| Press | 3.2 | ||
今回、元に戻した0度から90度までの、第一ピークカラム理論段数、ピーク対称性の推移のグラフをお示しします。
今回実験結果(その2)
縦軸:ピーク理論段数 N1およびN2 vs 横軸:折り曲げ角度
縦軸:ピーク対称性 Ps1およびPs2 vs 横軸:折り曲げ角度
見事なくらいほぼ一直線で カラム理論段数の低下、ピーク対称性の増加 がみられました。最終的に90度まで折り曲げたカラムの理論段数は、今回元に戻した0度に対して約40%低下、ピーク対称性は約1.5倍まで増加しました。その姿は、分析用キラルカラムというよりも、何か別の配管 みたいになってしまいましたね。もう一つ、興味を惹いたのは、カラム背圧がほとんど変化しなかったことです。折り曲げた箇所の背中側、お腹側で充填剤層の密度が変わったり、圧縮・破砕されると、カラム圧損に影響があるかな?と思っていたのですが、ほとんど変わりませんでした。
今回の良いマネ“曲がりカラムは歪んだピークの夢をみるか”の第二弾のタイトルは、“元に戻されたカラムは歪みピークの夢から覚めるか” でしたが、その結果は 「ほとんど夢から覚めていました(90%まで回復)」というものでした。が、その理由は、すみません、良く解っていません。なお、90度カラムを元に戻しても夢から覚めるのか?を観たかったのですが、このチューブベンターでは、戻すことはできず泣く泣く断念しました、ちょっと悔しいです。相変わらず、アホなことをやっているなあ、と思わないで、どうか、引き続き、お付き合いくださいませ。
★まとめ
前回の過激な挑戦が身の周りの皆さまに、結構、うけたので、調子に乗ってまたまたカッコよさげなタイトルをつけてやってしまいました。多分、理論段数は回復しないと思っていたのですが、予想外の結果と2回目の折れ曲がりの結果が割と再現性が良かったのに驚きました。0度から90度まで、ほぼ一直線の段数低下、ピーク対称性の増大のきれいな結果にも驚きました。やはり今回も真似してみよう、という方はおられないと思うのですが、念のために言っておきますね。
“(取説には記載していませんが)決してキラルカラムを折り曲げないでください”
“45度までなら元の形に戻すと9割がた性能が回復するといっても、やはりキラルカラムを折り曲げないでください”
どうかよろしくお願いいたします。
ファーマテックBU ライフサイエンス研究開発センター 所長補佐 大西(あ)
協力:同・研究開発センター 元田
協力:ダイセル新井ケミカル、ファーマテック生産開発課 木原
新メンバー紹介
(ライフサイエンス製品営業部 岩澤)
■プロフィール
岩澤 大二郎(いわさわ だいじろう)
学生時代は分析化学を専攻し、small RNAの検出方法について研究。卒業後、化学メーカーにて診断薬、バイオマテリアル、化粧品原料の研究開発、および、医薬品の受託製造の企画業務に従事。2025年8月ダイセルに入社。宮城県出身、趣味は筋トレ、食べ放題。
■ご挨拶
キラきら情報通信をご覧の皆さん、こんにちは。製品営業部の岩澤と申します。
今回は8月より製品営業部の一員となった私の自己紹介をさせてください。
前職では9年間研究開発に従事し、開発した製品が上市される喜びを味わってきました。例えば、もしかしたら普段お使いの化粧品に私が開発した原料が含まれているかもしれません。
ダイセルでは、心機一転、営業としてお客様により近い立場でサポートしていきたいと考えております。
初めてお会いした方にはよく、お酒みたいな名前だね、と冗談を言われるのですが、祖父が焼酎”大五郎”を愛飲していた事実があるため、お酒からインスピレーションを得た可能性は否定できません。真相は藪の中です。そんな私ですが、お酒にはめっぽう弱く、すぐ顔が赤くなる体質です。これは運命のいたずらでしょうか…
実は祖父は新潟に所縁があるそうで、岩澤姓も新潟で最多らしいです。そのせい(?)もあって、お米が大好物です。1日で5合平らげるほどに。食べすぎです。
それはさておき、新潟で製造されるキラルカラムの営業に携わることには浅からぬご縁を感じています。
これまで様々なライフサイエンス製品の開発に携わってきた経験を活かして、どんなお困りごとでも、全力で解決のお手伝いをする所存です。
ささいなことでもお気軽にご相談いただければ幸甚です。皆様にお会いできる日を楽しみにしています。
カラムとお米の有益な情報をご提供できるよう、勉強に励みたいと思います。
これからどうぞよろしくお願いいたします。
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