力場計算による保持のメカニズムについての推察

ここでは、分子力場計算の結果から多糖誘導体カラムにおける保持のメカニズムについての考察をいたします。
ベンゼン環が3つ縮合したフェナントレン・アントラセンと、4つ縮合したトリフェニレン・ナフタセンの保持係数をグラフ化したものを下に示します。

アントラセン・フェナントレン

<各化合物の保持比較>

1 2 3 4
ODS 6.14 6.79 11.3 15.72
OB-H 1.16 1.18 2.01 7.00
OJ-H 5.29 6.96 3.99 52.60
OD-H 1.30 0.69 28.45 1.93
AD-H 0.41 0.43 0.86 2.08

※表内の数値は保持係数K'

耐溶剤型キラルカラム(iCHIRALシリーズ)によるアキラル化合物の分離

グラフより、多糖誘導体系キラルカラムにおいては、ODSカラムと比較して特異的に強く保持される化合物があることがわかります。 特にOJ-Hは(4)ナフタセンを非常に強く保持していました。一方で(3)トリフェニレンの保持は小さくなりました。
どうしてこのような現象が生じるのか、ひとつの検証を行ってみました。ナフタセンとトリフェニレンのOJ-Hによる分離について、横浜国立大学の上田一義教授が分子力場計算を用いた解析をしてくださいました。(Carbohydrate Research 439巻p.35-43 2017年)。
OJ-H の不斉認識部位は図1 のようなポリマー構造と推定されます。このポリマー構造の周辺にナフタセンを配置してみて、一番安定な場所を探すと、図 2のようにポリマー構造の隙間にナフタセンが嵌ったようになっています。この隙間は、図1の白丸印の辺りですが、ここは見かけより奥行があって、床にグルコース環とベンゼン環、両壁がベンゼン環でできた廊下のような構造をしています。従って、細長いナフタセンと相性がいいのではないかと考えられます。
トリフェニレンはというと、これもやはり同じ場所に嵌ると推定されます。ところが、トリフェニレンが平面方向に大きいため、ポリマーが安定な形から歪んで隙間が開いていると考えられ、そのためもあって相互作用エネルギーはナフタセンの場合に比べて1 kcal弱ほど小さいと推定されます。つまり、ポリマーの持つ相互作用空間に対し、無理なく入れる分子と入りにくい分子が存在し、これが保持の大きさの違いに寄与していると考えられます。

<横浜国立大学上田研究室のホームページ>
http://www.ueda-lab.ynu.ac.jp/index.html

図1
図2
図3
図4

※ページ中の略称

カラム名 ページ中の略称
CHIRALCEL® OB-H OB-H
CHIRALCEL® OJ-H OJ-H
CHIRALCEL® OD-H OD-H
CHIRALPAK® AD-H AD-H